フローにんげんの一日

しょーもない日々にしょーもない突っ込み!

藪の中 4

木原さんはただ書類を取りに来ただけなのに、いつものように駄弁っている。しかも楽しむ為に話すのではない、部下の機嫌を取ることも経営側の仕事であると、割りきった上で忙しそうな駄弁りをする。

 

「湯崎がやらかしたらしいじゃないか、契約上は一月前が決まりなんだよ。なのに20日で辞めようなんて、これから先が心配だな。」とむやみにディスる

 

経営側と対立しても勝てはしないから、上手く口裏を会わせつつ、時給アップを目指したい。「次の会社は時給が1.7倍くらいになるそうですね」

 

「そんなに上手くはいかないよ、働く量は今の2倍さ。それを自慢気に話してさ、残された人のやる気を無くさせ、辞めて行くなんて迷惑な奴だ」

 

さすがにそれは言い過ぎだろう。「でも僕らには8月末に辞めること、きちんと話してましたけど」と呟くと。

 

「どっちであろうと関係ないさ、彼は仕事を辞めるのだから。早かろうとも遅かろうとも、僕らは被害を被っている。ただそれだけが事実なんだよ。」

 

残された側の人々にとって、真実なんてどうでも良い。居ない人間のせいにして、場が収まるならそれで良い。ご都合主義の考え方は、今年度中に辞める積もりの、僕の耳には嫌に響いた。