フローにんげんの一日

しょーもない日々にしょーもない突っ込み!

藪の中 2

「いやいや言って無かったど!」僕が口火を切るより先に、千賀チーフは話し始めた。「だって9月から本社に追加で働けるように、頼まれていたぐらいやし。」

 

「それから辞めるて言っていたから、まさか8月で辞めるとは…そりゃもう急いで次を見つけなきゃならないし、本社に連絡しなきゃいかんで、本当にもうバタバタよ」

 

「他で仕事が見つかったから、そいでいきなり辞めますなんて、言ったんじゃろな。でも残される身にもなってみ。あんなに苦労し、育てたのにな。今はベテラン気取ってるけど、最初はミスが多かったから…」

 

「え?聞いとった?いやいや、おいにはいっとらんもん。やっぱ決まるまで隠してたんかな?昨日聞いたんじゃなくってだよな、うんうん何かいっとったか。辞めると思って皆好き勝手言うからな。」

 

「まあでも確かに8月迄に辞めさせたるから、むしろ感謝して欲しいくらいだよ!本来ならばひと月前にはいわにゃいかんのに。それにどのみち辞めていくから…」と口を濁した千賀チーフは、怒り口調とは裏腹に、何だかちょっと悲しげだった。