フローにんげんの一日

しょーもない日々にしょーもない突っ込み!

料理をかこむ

母さんと婆ちゃんと兄貴と一緒に晩飯を食べに行ったのである。行き先は魚料理である。婆ちゃんは肉が好きだ。母さんは肉が嫌いである。兄貴は肉も魚も好きで、僕は魚が好きである。

料理屋に着くとまずは女性陣がメニューを取る。メニューと言うものは大抵高い品物を最初のページに大きく載せて、次に手頃な定食が続き、最後に単品、サイドメニューが並んでいるが、婆ちゃんは最初のページだけを見て、鼻を掻き掻き、横の兄貴にメニューを流した。兄貴は最後のページを見ながら、皆が決まるのを待っている。母さんはページすべてを眺めてまだ決めきらずに、自分が見れる余地を残して僕との間にメニューを置いた。

真ん中のページをはぐって行けば、大抵店のオススメがある。僕の頼むのはその定食だ。その後兄貴が丼ものを頼み「あんたはそれで足りるのね」とか言いながら、一番高いご馳走を頼む。そのタイミングで定員を呼んで差し支えはない。呼ばねば母は迷い続けてしまうから。

定員が来たら、母さんはしぶしぶ小鉢の並んだセットを頼んだ。定員が言うには、僕と母さんの料理には、うどんかそばが付いてくるらしい。僕がそばというと、母さんはうどん。うどんというと、母さんはそばである。なぜそうなのかは分からない。とにかく品数が多いことが、彼女にとって大事なのである。

料理が届くとまず婆ちゃんが、兄貴の方に刺身を押しやる。兄貴は僕に目配せをする。『豪華な料理はたべきれないから、俺は丼もので済ませてたのさ。やっぱり思った通りだろ』の意味である。

しかし婆ちゃんは意外と大食らいである。食べようと思えば自分の分は食べられるだろう。食べ終えて箸を置いてから、残った物を遣るのではなく、食べる前から渡している。それならきっと気遣いだろう。兄貴が足りないだろうと思って、刺身を上げたつもりである。

母さんは少しうどんを啜って、やたらに僕に食べろと言うが、それは食べさせたいのではなく、自分がそばをたべたいのである。でも僕はそばの方が好き。

会計の時に定員を呼び、伝票片手に婆ちゃんは得意そうである。兄貴は実に恐縮している、彼にとっては老婆だから。母さんはむしろ堂々としてる、彼女にとっては親だから。そうして僕はこともあろうに、一人でトイレに行っている。

ずるいかも知れない。けれども二人の気持ちが分かり、自分の中で争い出すと、まったく居たたまれないのだ。