フローにんげんの一日

しょーもない日々にしょーもない突っ込み!

距離感

大川さんと言う同僚がいる。僕より後に入ってきたが、僕の父親と同じぐらいの年齢である。ちょっと変わった人なので、一緒に仕事をしていると何だか余計に気を使う。けれどもそれは向こうも同じかもしれない。

僕らはジムで働いているが、僕が死角に立って居るとき、大川さんは大抵座って、爪をいぢったり、テープを巻いて遊んでいる。

遠くとも見える所に立つと、大川さんも立ち上がり、瞼を細めて遠くのテレビを見始める。

もう少しだけ近づけば、フクロウが昼にするように、眠たげな顔で首だけ動かし周りを見るし。時折動けば三メートルの円をよたよた描いて戻る。

そうして僕が寄って来るのを、じっと眺めて居たけれど、三メートルを切ったころ、視線を逸らせてちょっとだけ逃げた。それゆえに僕も背中を向けて、鏡を通して観察してみる。大川さんは伏し目がちになり、しばらく周りを探った後で、僕の頭に目を止めて、穴が空くほど見つめている。さすがの僕も振り替えれない。

しばらくすると視線を落とし、僕の足元を見はじめたので、むずむずしている踵を返し、再び彼にちょっと近づく。大川さんはためらいがちに一歩を踏み出し、それから天気の話を始める。雨が止んだから、お客さん達が増えたと言って、窓を見るようにそっぽを向いた。

僕も一緒に窓をみてたら、また一歩彼は近づいて来た。そうして、上司の陰口を叩く。僕はしばらく頷いていたが、事務所の電話が鳴ったので、ちょっと離れなきゃならなくなった。

大川さんは隣に立って、僕がアポを取る姿を見ていた。そして受話器を置いたあと、時を見計らい奥さんのことを喋り始める。作ってくれた弁当の話。最近怒られた出来事の話。

それから僕の隣に座って、昨日来た客の誰とかさんが可愛いとか。可愛くないとか話している。それから彼は顔を近づけ、愚にもつかない下ネタを言う。

それはつまらない、
けれどもそれらは面白かった。