フローにんげんの一日

しょーもない日々にしょーもない突っ込み!

誘い

お客さんに飲み会に誘われた、しかしながら行きたくはない。お客さんにとっては、僕は友達である。でも従業員にとっては、たとえ勤務時間でなくても、お客さんはお客さんである。

それを分かってくれれば良いのだが…

その彼から何度も連絡が来る。飲みに行きたいだけではなくて、夜中に電話したいとか、一緒に温泉行こうとか、或いは飯に連れてって来れと。

それはありがたいことなんだけれど、残念ながらお客様という意識が重く、後ろ髪引かる思いである。そこで僕は、やんわり彼に断りをいれた。

すると彼は「実はですね」と切り出して、同僚の子の連絡先を教えて欲しいと言いはじめた。僕はとっても悲しくなった。それが目的だったのかと。だから彼とも話さなくなった。そうして一週間がたつ。

実は今日、彼は落ち込んでいた。第一志望の就職先の最終面接に落ちたらしい。僕は彼に話しかけた。彼は笑いながら「いやぁ、つらいっすね」と頭を掻いた。

素直に可哀想だった、悔いなく自分を出し切れたと、言ってただけに落ちた時には、自分そのものが否定をされた気になるだろう。うっかり彼を御飯に誘い出してしまう。

彼は話をしてくれた。ニートになって、家族の視線が恐いこと。同級生とも連絡を絶って、町を歩くのも緊張すること。胸は正直バクバクなのに、無理して笑って歩いてること。そしてその胸の裡を誰にも話せていなかったこと。

彼を送った帰り道。素直に彼の幸運を祈った。空を見上げて一番星に願いを込める。すると鉢植えにつまづいてしまった。鉢を立て、土を拾い上げ、道路の隅に戻した後で、今日1日の自分は何とうっかりなことかと、ついた溜め息は夜空の中に吸い込まれる。

うっかりものの星空はしかし、いつもよりむしろ輝いて見えた。