無情な筆者の情けなさ
姉夫婦の家にちょっとだけ居候している。
朝方に義理の兄貴が電話で『叔父の訃報』を受け取った。
義理の兄貴の父の兄弟の死である。
正直僕には実感がわかない。姉は残念そうである。子供は戦いごっこに興じて「人間はどうせ死ぬものだから」と悟ったことを言いながら、何とかソードを振り回している。
自分の叔父さんが亡くなった時、僕は悲しいと思わなかった、心がふわふわしただけである。無情なのかも知れないが、うわべで共感するのは嫌だ。
気まずいけれども、寝転んだままで、兄貴の様子を伺っていた。悲しい顔はしていない。優しい口調で電話を切ると、急ぎスマホで飛行機を取り、バタバタ準備を始めたものの、ものの五分も経たぬというのに、子供が叫ぶ声がする。
「俺たちは腹が減ったんだぞー!」
いつものようにおどけた積もりで、僕も叫んだ。
「俺たちは腹が減ったんだぞー!」
義理の兄貴がやって来て、食事の支度をしてくれた。子供と一緒に平らげて、皿を洗って再び寝転ぶ。緊張のあまりお腹がキリキリ痛み始める。
そして出発の一時間前、子供とテレビを見ていたら、義理の兄貴がやって来て「あー、イライラする」と頭を掻いて、口の中だけ呟いた。親しい叔父の葬式の、準備が進まず、明日の予定も崩れてしまい、さすがに動揺してたのだろうが、再び僕のお腹が痛む。
一人トイレに引きこもり、うつむく男の情けなさ。もはや空気がまずいのだ。